デブという社会の敵
その昔、肥満は富の象徴であった。今は醜いただのデブ……と思いきや、やたらと明るく振る舞ったり、人権を主張し始めているという。いやいや、アンタら、他人に迷惑を掛けていることを自覚して!
文/ダテクニヒコ (実話BUNKAタブー2021年5月号掲載)
ポジティブなデブが急増中!?
コロナ禍の自粛、ステイホームで体重が一気に増える「コロナ太り」。
ネットの調査では6割近くの人が自粛期間を経て、太ったのを実感しているというデータもある。まあ、都内では緊急事態宣言が延長されたし、家に居ながら絞っていくか。それとも落ち着いてから一気に外でダイエットに励むか……となるのが健全な考え方だが、今どきの流れは「デブのままで行こう!」となってしまうらしい。
痩せているのが美しいという従来の定義から外れ、プラスサイズの体をありのままに愛そうというムーブメント「ボディ・ポジティブ」。SNSを中心として「もっと多くの人は太るべきだ」といった動きが活発化しているという。
えーっと、何を言っているのかわかってる?
日本もこの世界的なムーブメントに巻き込まれており、デブを「ぽっちゃり」と言い換えたり、肥満女子を「マシュマロ女子」とか呼んでみたり。「ぽちゃカワ女子」向けのファッション誌や「ポチャメン(ぽっ
ちゃり男子)」向けの情報誌まで発売されている始末。
つまりデブがデカい顔をしまくっているのである。
さらに海外ではデブの人権を訴える活動家まで出てきている。イギリスでイラストレーターをしている女性が飛行機旅などでの実体験を元にした「デブ差別」の実態を描くアニメーションドキュメンタリーを発表。その内容はというと……。
「隣の人に『スペース取りすぎ!』と罵られた」とか。
まあ、隣の人のエリアを侵害していたら、そう言われても仕方ないよね。
「席を仕切る肘掛けを降ろされた」とか。
隣に人が来たら、普通は降ろすだろ。
「飛行機で席を探しているときの他の乗客の表情……みんなにジロジロ見られるんです」
考えすぎじゃない? 自意識過剰じゃない?
「デブなのを散々こき下ろした上、『あんたたちの健康のために言っているんだよ。いっぱい責めて、気付かせて、痩せさせてあげるんだよ』と言う人もいる。しかし、それは間違っている。肥満の人に『デブだ』『痩せろ』というと精神的ストレスでさらに食べてしまうことが研究で判明しているからだ」
いやいや、デブだから言われるんであって、痩せれば言われなくなるし、ストレスもなくなって食べなくなるから、太ることもなくなるでしょ。嫌なら痩せな。
「もし私が選択的肥満ならば、他人にどうこう言われる筋合いはない!」
自分で勝手に太っているんだから、好きにさせてよということ?
いやいやいや、もしかして自分はデブなだけで、誰にも迷惑をかけていないと思ってる?
勘弁してください。
座席の件でも隣の人のスペースにはみ出していたら、明らかに邪魔だし。それ以外にも、社会にいろいろと迷惑をかけていることを自覚してください!
医療費の約8%はデブのため!?
まずはわかりやすいところでスメルハラスメント、「臭い」の問題。
……え!? 「それはデブとは関係ないでしょ!」ですって?
いやいや、大いに関係あります。
人間が出す不快な臭いはいくつかの臭いが混ざったもの。まずは「疲労臭」と呼ばれる「アンモニア」の臭いから説明していこう。
腸内や筋肉でタンパク質が分解するときに発生するアンモニアは通常、血液によって肝臓に運ばれて無臭の尿素に変えられるのだが、疲労が溜まっていたり、肝臓が弱っていたりすると、処理しきれなかったアンモニアが汗に混じって臭いを発する。つまり運動不足のデブはすぐ疲れるので疲労臭が強まるのである。
次に「ミドル脂臭」。激しい運動の後や疲れたときに溜まる乳酸が過多になると汗に混じって出てきてしまう。皮膚の上にある細胞がこの乳酸を分解してできる「ジアセチル」という物質が、「古くなった油の臭い」と言われるミドル脂臭の原因となる。これも疲れやすいデブは発しやすい。
あと、糖尿病のデブ特有の甘酸っぱい臭い。「腐ったバナナのような臭い」と形容される体臭は「ケトン体」の臭いである。
これらアンモニア、ジアセチル、ケトン体が「加齢臭」の原因としておなじみの「ノネナール」と混ざることで、不快な臭いになるのだ。ノネナールは年を取るほど出やすくなるが、若い人でも出ることから、若いデブもおっさんのデブも、痩せている人より臭くなりやすいということになる。
デブが臭いのには科学的根拠アリ!
すぐに疲れが溜まらないように日頃から運動して、清潔な汗をかいてください。ストレス発散にもなりますよ……あ、ストレスといえば、『予防医学研究所』が行った調査によると、「怒りっぽい、イライラすることが多い」の質問に「とても当てはまる」「当てはまる」と回答した人は、肥満でないグループが55・9%だったのに対して、肥満のグループは66・3%で10%以上、上回ったという。要するにデブのほうがストレスを抱えやすいということ。ストレスを発散するために食べるのではなく、他の方法を探してください。
「食べる以外にない!」とかわがまま言わずに、探してください。ストレスで食べて太ったアナタは臭くて迷惑なのですから。
ちなみにストレスでハゲると言われているが、デブでもハゲる。
詳しい説明はかなり専門的なので割愛するが、簡単に言うと「インスリン」というホルモンの効きが悪くなる肥満の体内では薄毛の原因である「ジヒドロテストステロン(DHT)」が作られやすくなり、ハゲやすいということだ。
そう、インスリンは血糖値を下げる働きがあるホルモン。この効きが悪くなると糖尿病になる。他にも肥満は高脂血症、高血圧、痛風、胆石症、骨粗しょう症、狭心症、心筋梗塞、虚血性心臓病、脳卒中、乳がん、子宮がん、大腸がんの原因となる、万病の元。
こう言うとデブは「俺が病気になろうがなるまいが、関係ねぇだろ!」とか言い出す。いやいや、関係あるから言っている。
病気になれば病院へ行く。病院に行けば医療費がかかる。保険に入っていれば7割から9割を国が負担してくれるわけだが、財源がどこにあるかといえば……。
我々の税金だ。
つまり自分勝手に太るデブは、デブじゃない国民全員に迷惑をかけていることを自覚せよ!
実際にどのくらいの負担増になっているのか?
OECD(経済協力開発機構)の分析調査によると、太りすぎの人は健康な体重の人よりも多くの手術を受けて、2倍を超える処方薬を使用している。OECD諸国の平均で見ると、糖尿病の治療コストの71%は太りすぎによるもので、循環器疾患とがんについても、それぞれ治療コストの23%と9%を過体重関連が占めているという。分析対象52カ国における太りすぎが原因の疾患の治療費は、年間推計4230億米ドル。平均1人当たり年間で200米ドルを超えるコスト負担をもたらしている。
医療予算全体の約8・4%が、太りすぎが原因でかかる疾患の治療に費やされているというのである。
こう言うとデブは「俺は病気になってないから関係ねぇだろ!」とか言い出しかねないのでお伝えすると、アメリカのジョンズ・ホプキンズ大学の研究グループが、肥満の成人が生涯でかかる慢性疾患や健康状態を追跡して関連する費用を算出。適性体重の人と比べて医療費や欠勤、休職などによる生産性の損失額がどれだけ増えるのか推定したところ、血圧や血糖値などに問題のない、いわゆる健康な肥満の成人であっても、数万ドルにのぼる医療費や生産性の損失といった社会的コストがかかるとわかったのである。
高齢化が加速する日本では医療費が増え続けており、それを補うべく増税が急務だと言われているが「消費税反対!」とか叫ぶ前に、「デブは痩せろ!」と声を上げるべきだろう。
バカで稼げずにボケやすいデブ
デブは内臓だけでなく、アタマにも悪影響を及ぼしているようである。
2014年、北米神経科学学会が8年間に渡って60代を対象に行ってきた研究結果が発表された。その内容は、肥満体型の被験者は脳の認知機能に関わる海馬が1年で2%近くも収縮していたというもの。これは標準体型の収縮率の約2倍であった。
バカでボケやすいデブは医療費の負担が増えるのはもちろん、介護する家族にも多大な迷惑をかけるということを自覚せよ!
デブは子どもでも頭が悪くなることが解っている。
ニューヨーク大学は、同じような社会的・経済的地位で育ってきた、同じ学校に通う同学年のメタボリックシンドロームの子ども49人と、そうでない子ども62人を対象に能力テストを使った調査を行った。結果、メタボの子どもはそうでない子どもに比べてスペリングのテストで平均4点低く、算数の点数は平均10点も低かったのである。
さらに集中力の持続時間、臨機応変に行動するなどの精神的柔軟性も低く、海馬も小さかったという。
同じような調査結果はOECDも発表していて、肥満の子どもは健康的な体重の子どもと比べて優秀な成績を収めている確率が13%低く、成長して高等教育を修了する可能性も低いとのこと。生活満足度も低い上、いじめに遭う可能性が最大で3倍高くなるというデータも挙げている。
成人後、太りすぎに関わる慢性疾患がひとつでもある人は、就職できる可能性が8%下がり、仕事に就いたとしても欠勤率が3・4%高くなるとも。当然、生産性は低い。
最低所得層の肥満率は最高所得層に比べて、女性で70%、男性で30%高くなっているというデータもある。デブが格差を助長している。
アメリカのジョージ・ワシントン大学の調査によれば、肥満気味の人は平均体重の人よりも5826米ドル年間収入が少ないという。
厚生労働省は、肥満者の割合は男女とも低所得層のほうが高い傾向にあり、年収600万円以上の男性の肥満率が25・6%であるのに対して、年収200万円未満の低所得層では38・8%と10%以上の差があると報告している(『平成26年国民健康・栄養調査』)。
OECD諸国のGDPは太りすぎの人口が増加していることにより、平均して3・3%押し下げられているという分析結果も。
これだけデータを挙げればお解りいただけただろう。
デブはバカで仕事はできないし、稼げないし、生産性はない上に、医療費で税金を使いまくる、社会の害悪でしかないことを。
世界各国の政府もさすがにキレたのか、デブに制裁を加えることとなった。いわゆる「肥満税」である。
最初に発表したのは2009年の台湾政府。国民健康局によって不健康だと見なされる飲食品(砂糖過多の飲料、ファーストフード、ケーキなど)を課税対象とした。翌2010年にルーマニア政府もフライドポテトやスナック菓子などの課税を開始。2011年にはデンマークが高脂肪食品のバターや乳製品、肉類などに税金を課したことで「脂肪税」などと呼ばれたが、日常的な食料品を対象にしたことで国民の反発が強く、翌年には廃止されている。
2013年には国民の約30%が肥満だというメキシコが炭酸飲料を中心とした高カロリー食品に対して課税を決めた。
隣国のアメリカでも肥満税の導入が議論され続けているが、国としての導入には至っておらず。カリフォルニア州バークレー市のみ、住民投票によっていわゆる「ソーダ税」が採用され、2015年から炭酸飲料などが課税対象となっている。
他にもアメリカではジャンクフードのコマーシャルを自主規制する動きが出てきていたり、ブルガリアでは全国の学校の食堂や売店からスナック菓子や炭酸飲料を撤去していたり。トンガの首相が近隣国家の首脳に1年間のダイエット競争を呼びかけ、サウジアラビアでは肥満対策として女児にも体育活動を解禁した。
……まあ、最後の2つは他と毛色が違うが、いずれにしても、デブ撲滅に政府レベルで動き始めている。
民間企業でも、2013年にサモア航空は座席あたりの運賃制度を止めて、乗客の体重に基づく運賃制度を導入している。要するにデブは重たくて飛行機に負担をかけているんだから、もっと金を払えというシステム。これに反発はなく、人気を博したという。
日本の政府や企業も是非見習っていただきたい。社会の害悪でしかないデブを一刻も早く撲滅しよう!